景色を一望できるLDK
少し現実から離れた空間やデザインをお望みなのは、お話していてわかりました。私たちがデザインをしていく上で大切にしていることは無理に全てを聞き出さないこと。固定概念にとらわれないよう、いろいろなお話をしながら好きな物や色・どんな生活をされてみたいのか、どんな未来を見てらっしゃるのかを感じ取っていくようにしてます。お話が苦手な方、主張するのが得意ではない方、その真逆の方。お客様のお人柄に合わせて、たくさんの会話の中からその方自身を見つけていけるようにお話します。

T様はまさにそんなお方でした。ご夫婦ともにゆっくりとしとやかにお話される方でしたのでご理解させていただくのに少し時間を頂きましたが、共有するたくさんの時間があったからこそお望みされてることをちゃんと理解できたのだと思います。

グレー基調のキッチン、壁一面の天然石の切出し風エコカラットの存在を邪魔しないように、LDKのクロスはすごくシンプルなものをセレクトしソファーや家具も映えるようにデザインしました。縦長のLDKでしたのでリビングからキッチンを眺めた時の奥行き感と全体のカラーをまとめる為に、キッチン背面は深いオリーブ色の塗装で施工してます。セオリーで行けばクロスか同系統のグレーで合わせるのですが、朝の光、昼の光、夕方から夜にかけてのお部屋の見え方を見ておきたかったので、長い時間をかけ現地でコーディネイトをしました。奥行きがある為時間帯で自然光の入り方がかなり違いますので、クロスでは出せない塗装が織りなす色の変化がとても綺麗です。

ガラス張りのバスに合わせて洗面室から寝室にかけては、LDKの仕上げとは異なり就寝までの時間と空間を落ち着いた感じにデザインしました。デザインに自信がないと終始仰ってましたが、寝室でご提案させていただいた全面黒の内装をすごくお気に召していただいたり、洗面室とトイレでお選びいただいたクロスも落ち着いた格好良さがありほんとうにセンスの良いT様ご夫妻でした。ご自身でご購入されたリーン・ロゼのソファーもとても素敵なお色目でセンスが伺えます。寝室はマットブラックの壁面にほんの少しだけトーンを上げた天井クロスに上質な金糸で織られたドレープとレースをあしらいました。上品な空間を作り出してくれてます。

お引渡し後、造作水屋箪笥のご相談をくださいました。元々家具デザイナーを目指していた事もあり家具や建具のご依頼はわくわくします。